自力整体実践の手引き   (矢上裕より)

 

 

〇 自力整体は自分で自分に施すマッサージだと考えてください。 

    皆さんがマッサージに行くと60分コースや90分コースがあるように、

    全身マッサージをするので90分という時間が必要。 

    全ての教室は90分のプログラムに合わせています。

 

〇 写真で見ると一見ヨガのポーズのようですが、これは筋肉への刺激療法を行っている姿です。

  ですから、硬くて写真の姿ができなくても構いません。 

  その形をすることで、痛いけれども気持ちの良い刺激を感じていれば、効果はあります。  

 

〇 動きやすい服装で、時計やバンドなどは外しましょう。家なら寝巻が良いでしょう。

 

〇 食後すぐは動きづらいです。 空腹の時が筋肉も柔らかくて動きやすいです。

   (だから朝食抜きと言っていますが、空腹時であればいつでも可能です。)

 

〇 硬い人は風呂上りで筋肉を温めてから行うのも良いでしょう。

 

〇 できない形がある場合、出来ないところから徐々にできるようになるプロセスが治療です。

   できないからと最初からやらないのでは治療にはなりません。 

   少しずつ動く範囲を拡げていきましょう。

 

〇 教室で集団で行う場合、

   どうしてもうまくやれている人と自分を比べて頑張り過ぎる場合がありますが、

   先生の声だけ聴き目を閉じて一人の部屋でやっているように、自分の感覚に集中しましょう。 

   形ができることよりも、良い刺激を与えているかの方が治療効果になります。

 

〇 自力整体のそれぞれの技は、整体師である私が患者さんを治療していて効果が合った整体法を

   自分で行えるように改良したものです。 

   やりながら、「治療を受けている自分と」 「治療している側の自分」を意識して行うと効きます。   

   刺激を受ける側は脱力に徹してください

 

〇 やる時間帯はいつでも構いませんが、一日の疲労回復として 仕事を終え、お風呂に入り身体を

   温めてから自力整体を行い、その後で夕食を摂り、ぐっすり眠る という流れが最高です。

 

〇 私が自力整体を自分で創作しようと思ったきっかけになったのは、27歳から35歳までヨガの指導者

   の時でした。 ヨガを指導しながら、「身体が硬い人、痛みのある人、

   そして高齢者には 若い人と同じポーズを頑張らせるのはキツイ」と感じたことからでした。 

 

   ヨガはどうしても完成ポーズを目指しますから、硬い人はストレッチし過ぎで、

   ヨガが終わった後、腰痛や 坐骨神経痛になる人が多かったからです。

   それで、私は大勢の中でやっていても、生徒が自分のペースで、強さで 

   ただひたすらに気持ちよい刺激を自分に与えることのできる自力整体を創作したのです。

   ですから、 自力整体には完成ポーズはありません。 

   できるところまで無理せずに、気持ちよい刺激を与えることに集中しましょう。

〇 どこか痛い人に多いのですが、「治そう、治そうと頑張り過ぎる」と、かえって自力整体が

   ストレッチになり、痛くて嫌いになりますし、効果も上がりません。 

   終わった後に疲れとだるさがやってきます。 

   終わった後、疲れたりだるかったりするのは自力整体でなくストレッチになっています。

   それよりも「気楽な気持ちでマッサージ」してください。

   治すための自力整体ではなく、身体を観察して心地よい刺激をする時間にしましょう。

 

〇 これまでの35年の指導生活で多くの生徒を見ていて感じるのは、

   日ごろから自分の身体と対話している人、飲食に気をつけ、身体を丁寧に優しく使っている人は   

   自力整体を好きになり、そして続きます。 

   でも、日ごろ飲食の不摂生、身体の酷使に対して無頓着で、痛めた時だけ慌てて自力整体で

   治そうとする人は「治すために無理をする」ので、効果がでないし続きません。

   自力整体はインスタントに治すための頓服薬ではありません。

   「良くなっていくには、悪くして来た同じ時間がかかる。来た道を帰るのと同じだ」 と

   自覚してください。

   そういう方は確実に成果を上げていますし、生涯の友として自力整体を行っています。

 

〇 どこかが痛い時に 「その患部を伸ばそう、刺激しよう」とする人が多いのですが、

   それで良くなるケースは少なく、かえってその刺激で余計に痛くなることがあります。

 

   痛みやコリの多くは 「代償性疼痛、または緊張」といって、その痛みを引き起こす黒幕の

   凝りが別の所にあって、その黒幕の凝りがほぐれていかないと、痛みや緊張はなくならないという

   法則があります。 

   もちろん打撲やケガは局所の問題なので省きますが、怪我でもないのにある時自然に起きる

   痛みや凝りは、別の場所の黒幕を直さないといけません。

   だから局所だけの刺激ではなく、90分かけて全身くまなくほぐし、黒幕ほぐしをやっているわけ

   です。 結局、黒幕がほぐれたら、痛かった部分に何の手当もしなくても自然に痛みや緊張は

   なくなります。

 

 自力整体は全身治療でなければならない」という考えの元に作られていますので、

   「~病に効く自力整体は何ですか?」と聞かれても、薬局のように「これが良いです」とは

   答えられません。

   どんな痛みでも不調でも全身を整体にしないと問題は解決できないと思ってください。 

 

   自力整体は病名医学とは異なり、全身医学です。

   90分という時間をかけて、全身を整体にするしかないのです。

 

   「この痛みや不調には、この自力整体が効く」という病名医学の考えは捨ててください。